介護記録がスラスラ書けるようになる!専門用語に頼らない「伝わる文章」の書き方テクニック

介護の仕事において、避けては通れないのが「介護記録」です。しかし、多くの新人さんや未経験から始めた方が「何を書けばいいのか分からない」「文章を作るのに時間がかかって残業になってしまう」と頭を抱えています。

立派な記録を書こうとして、無理に難しい専門用語を並べる必要はありません。大切なのは、次にその記録を読むスタッフや、時にはご家族が見たときに「その場の状況が映像のように浮かぶかどうか」です。

この記事では、専門用語に依存せず、シンプルで正確な「伝わる記録」をスラスラと書くための実践的なテクニックを紹介します。

なぜ「専門用語」に頼りすぎるといけないのか?

なぜ「専門用語」に頼りすぎるといけないのか?

介護現場では「不穏(ふおん)」「徘徊(はいかい)」「拒否(きょひ)」といった言葉が日常的に使われます。これらは便利な言葉ですが、記録においては時に「思考停止」を招く罠になります。

言葉の裏にある「具体的な事実」が消えてしまう

例えば「入浴拒否あり」という一言。これだけでは、利用者様が「お風呂が熱そうだから嫌」と言ったのか、「今はテレビが見たいから後にして」と怒ったのか、あるいは「服を脱ぐのが恥ずかしい」と戸惑っていたのかが全く分かりません。

理由が分からなければ、次のスタッフはどのような対策を立てればいいのか判断できません。専門用語は状況を「ラベル貼り」して短縮してしまいますが、本当に必要なのは「なぜそうなったのか」という具体的な事実なのです。

利用者様の尊厳を傷つける可能性がある

「徘徊」という言葉は、かつては一般的でしたが、現在は「目的を持って歩かれている」という視点から、より具体的な動作で書くことが推奨されています。記録はご家族が閲覧することもあります。「徘徊していた」と書かれているのと、「落ち着かない様子でロビーを歩かれていた」と書かれているのでは、受け取る印象が大きく異なります。

 

「映像を言葉にする」客観的な描写のコツ

「映像を言葉にする」客観的な描写のコツ

良い記録を書くための最大のコツは、自分の感情や推測を一旦脇に置いて、「ビデオカメラに映っているものだけを言葉にする」ことです。これを「客観的描写」と呼びます。

主観(自分の感想)と客観(事実)を分ける

  • 主観的な書き方: 「〇〇様はとても怒っていた」

  • 客観的な書き方: 「〇〇様は眉間にしわを寄せ、大きな声で『あっちへ行け』と仰った」

「怒っていた」というのはあなたの主観(解釈)です。しかし、「大きな声を出した」というのは誰が見ても変わらない事実です。事実を積み重ねることで、読み手は「ああ、この時の利用者様はかなり立腹されていたんだな」と正しく状況を判断できるようになります。

曖昧な「形容詞」を具体的な「数字・動作」に変える

「たくさん」「少し」「いつも通り」といった言葉も、人によって受け取り方が変わるため、極力避けましょう。

  • 「たくさん食べた」 → 「主食を10割、副食を8割摂取した」

  • 「少しふらつきがある」 → 「立ち上がり時に左側に大きく体が傾き、手すりを掴み直した」

  • 「いつも通り過ごされた」 → 「日中は離床され、談話室で他利用者と談笑して過ごされた。検温・排便異常なし」

具体的に書くことで、体調の変化(予兆)にも気づきやすくなります。

 

今日から使える!「専門用語」の言い換えリスト

今日から使える!「専門用語」の言い換えリスト

専門用語や便利な言葉を、より伝わる具体的な表現に言い換える例をいくつか紹介します。

「拒否」の言い換え

  • 食事拒否: 「『今はお腹が空いていない』と仰り、箸を持とうとされない」

  • 更衣拒否: 「服に手をかけると、ご自身の手で服を強く握り、首を横に振られる」

「不穏」の言い換え

  • 不穏な様子: 「表情が険しく、椅子に座ってもすぐに立ち上がる動作を繰り返される」

  • 落ち着かない: 「周囲をキョロキョロと見渡し、『私の荷物はどこかしら』とスタッフに繰り返し尋ねられる」

「帰宅願望」の言い換え

  • 帰宅願望あり: 「出口に向かって歩かれ、『子供が待っているから帰らなきゃ』と仰る」

これらの言い換えを行うことで、利用者様が今「何を求めているのか」というケアのヒントが自然と記録の中に残るようになります。

 

5W1Hで構成する「時短記録術」

5W1Hで構成する「時短記録術」

文章をゼロから考えるのは時間がかかります。迷った時は、ニュース原稿などでも使われる「5W1H」のフレームワークを使いましょう。

構成のテンプレート

  1. When(いつ): 15時30分頃

  2. Where(どこで): 廊下にて

  3. Who(誰が): 〇〇様が

  4. What(何を): 転倒されているのを発見

  5. Why(なぜ): 足元のマットに躓かれた様子で

  6. How(どうした): 右膝を擦りむいており、看護師に報告し処置を実施。痛みはなしとのこと。

このように要素を抜き出すだけで、あとは繋げるだけで文章が完成します。

「アセスメント(気づき)」も添えるとさらにプロらしく

事実だけでなく、プロとしての視点を一言添えると、さらに質の高い記録になります。

  • 事実: 昼食の摂取量が普段の半分以下であった。

  • 気づき: 嚥下(飲み込み)時に喉をさする動作が見られたため、咽頭に違和感がある可能性がある。

  • 対応: 夕食時は形態を一口大に調整し、様子を観察する。

事実の後に、「だからこう考えた」「だからこう対応した」という流れを作ると、情報の価値がぐっと高まります。

 

まとめ

介護記録は、決してあなたの語彙力を試す場所ではありません。大切なのは、あなたが見た利用者様の「今の姿」を、次のスタッフへ正確にバトンタッチすることです。

  1. ビデオカメラに映る「事実」をそのまま書く。

  2. 曖昧な言葉(たくさん、少し、拒否など)を具体的な動作や数字に置き換える。

  3. 5W1Hを使って、迷わず構成する。

この3つのポイントを意識するだけで、記録への苦手意識は劇的に改善されます。専門用語に頼らなくても、具体的な描写ができるようになれば、あなたはもう立派なプロの表現者です。

スラスラと書けるようになれば、業務時間が短縮され、その分を利用者様と触れ合う時間に充てることができるようになります。まずは今日の一言、「いつも通り」を「〇〇をされていた」と具体的に書き換えるところから始めてみませんか?